覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)


 

 バスの中で、いきなり、編集だという男が現れ、びっくりしたが。

 何故か、
「先生をよろしくお願いいたします」
と頭を下げられ、

 八尋は宣言通り、衣茉をマンションまで送って行った。

 森の手前にある大きなマンションが見えてくる。

 ……今日もここで終わりか。

 別れるのが寂しいとか。
 俺は思わなくもなくもなくもないのだが。

 お前はそんなこと思いもしないんだろうな、と衣茉を見下ろす。

 近くのマンションの前に行き、衣茉に炭酸飲料を買ってもらった。

 送りたくて送っているのだから、別に買ってもらわなくてもいいのだが。

 そうしないと、彼女の気がおさまらないようだったから。

 暗がりで明るく輝く自動販売機のボタンを押しながら、衣茉が言う。