覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)



「最近、課長、帰るの早いですね」

 今日も帰りのバスで一緒になった八尋に衣茉はそう訊いた。

「めちゃくちゃ効率的に早回しに仕事してるから」

 窓ガラスの方を見ながら、八尋は言う。

 何故、突然、めちゃくちゃ効率的に早回しに?

 働き方改革だろうか、と思いながら、衣茉は外が暗いので自分たちの姿が映っている窓ガラスを見る。

 しばらく八尋は沈黙していた。

 うーむ。
 なにかお悩み事があるとか?
と衣茉は、チラチラ八尋の方を窺う。

 八尋は沈黙している。

 ひとりで考えたいことでもあるのかもしれないと、衣茉は、じりじり八尋から離れ、もうひとつ隣の吊革に移ろうとした。

 だがそのとき、八尋が衣茉を見下ろし言う。

「今日も送っていってもいいか」

「えっ?」