「えーっ。
衣茉ちゃんが綾原先生なの~?」
ものすごく嫌そうに言われてしまいました……。
湯村さん、嫌なのですか、私が綾原小織では。
そこで、明子は、はっとした顔になると、祈るように手を合わせ、衣茉の顔を見ずに言う。
「ごめんなさい。
綾原先生」
私ではない何処か遠いところにいらっしゃる『綾原先生』というものに向かい、謝っているようだ……。
「でも私、ちょっと夢を壊された気分なんです」
すみません。
綾原小織がこんなマヌケな後輩で、と思ったとき、明子が言った。
「あんな素敵なラブロマンスを書く作家が、恋も知らない後輩だなんて」
「えっ?
書いてませんよ、ラブロマンスなんて」



