覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「あっ、もしかして、衣茉ちゃんも、この本読んだことあるの?」

「か、神棚に上げてあります……」

 ハードカバーも、あとで文庫になったこれもっ、と衣茉は震える手でその本を受け取る。

 息ができないくらい衣茉は驚いていた。

 身内と友人以外で、初めてこの本の読者だという人に遭遇したからだ。

 いや、どんだけ売れてないんだと自分で思いながら。

「えーっ。
 衣茉ちゃん、そんなに綾原先生のファンなの?」
と笑う明子に、衣茉は、ひしっと抱きついた。

「湯村さん、神っ!」

 なになになにっ!? と叫ばれ、

「この本、この世で誰も読んではいないのではと不安になっていました~っ」
と叫び返す。