覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 なに似合わないことしてんだお前。

 やっぱり、八尋の相手って……と思ったとき、八尋が言った。

「あの橋を、お前が落ちないよう、手を握って歩く夢だったんだ。
 あの狭さでは、横並びになると落ちると思うんだが」

 まあ、夢だからな、と言う八尋は、淡々と夢で見たものを語っているだけらしく。

 口説いているような様子はなかった。

「そうなんですか。
 私は、犬だか猫だか、よくわからないものが出てきて幸せでした」

「よくわからないものってなんだ?」
と八尋に問われた衣茉は、小首を傾げる。

「なにか、こう、ほわほわした犬か猫みたいな。
 なんだかわからないものが膝にのってる夢だったんです」

「……なんだかわからないものがのってたら怖いだろうが」

「いや~、でも、いい夢だったんですよ~」

 なんかあそこ、不思議な会話をしている……と思いながら、吉行は声もかけずに二人の後をついて行った。