覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「どうしたんですか! 秋馬さん!」

 ぐはっ、と椿は声を上げた。

 いや、本気で絞めてはいないのだが。

「やはり、回りくどいことせずに、こうして直接手を下した方がっ!」

 実感を感じられるように素手でっ、と秋馬が叫ぶと、

「すみません。
 すみませんっ」
と何故か、椿が謝りはじめた。

「申し訳ありませんっ。
 事故だったんですっ。

 秋馬さんのお気に入りの鞄にコーヒーこぼしたのはっ」

「お前だったのかーっ」

 まだ残っていた女性編集長が、
「ちょっと忙しいから、殺人事件やめて」
と顔も上げずに言う。

 椿から手を離した秋馬は、獲物の周りをグルグル回るケモノのような目で編集部を見渡し、呟いた。

「……なるほど。
 手当たり次第、首絞めて歩いたら、それぞれがいろいろと白状するかな……」

 その場にいた全員が仕事の手を止め、ひっ、と首に手をやった。