「では、本日はどうもありがとうございました」
衣茉に駅の新幹線口で深々頭を下げられ、
「うん。
無事に今日中に帰れてよかったな」
と言いながらも、
……よかったのか?
無事今日中に帰れてよかったのか? ほんとうに?
と思う自分もいたような気がしたのだが。
とりあえず、顔には出さないようにした。
「それではっ」
「あ、待て、祝」
送っていくから、と言って、その肩をつかもうとしたが。
わずかに手が触れた段階で、ちょっと下向き加減に階段を下りようとしていた衣茉はバランスを崩し、わあああああっと転げ落ちそうになる。
宝塚の大階段をなんとなく思い出してしまう、高さのある大きな階段だ。
八尋は慌てて衣茉の手をつかんだ。
「すまん。
大丈夫かっ?」
かろうじて落ちなかった衣茉を自分の方に引き寄せようとしたとき、衣茉が叫んだ。
「これですっ、課長っ」
「は?」



