覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 バス停が見えてきた。

 ここはチヨの家がある集落より、ちょっと街のようだ。

 小さなパチンコ屋さんまである。

 八尋たちは、タヌキが呼んでくれたタクシーに乗り、タヌキにいただいたお小遣いでタクシー代を払い、無事バスに乗れた。

 祝はおばあちゃんはタヌキだと言うが、やっぱり、いいタヌキなのではないだろうか。

 今度、お礼になにか贈っておこう、と思っているうちに、単線の風情ある駅にたどり着く。

 もう日はとっぷり暮れている。

 駅の端の方には使われていないらしい、草が生い茂っている線路があって。
 そこから聞こえてくる激しい虫の音が小さな駅に響き渡っていた。

「あ、もう来てますよ」

 暗闇の中でやけに明るく見える、一両しかないディーゼルカーに乗り込もうとした衣茉を八尋が止める。

「待て」

 え? と衣茉が振り返った。

「このままでは帰れない」