覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

「日本昔ばなしなら、奥へ引っ込んだおばあさんは、確実に、ひひひひって、包丁研いでます」

「いや、台所で包丁研いでもいいじゃないか」

 料理屋なんだから、と言ったが。

「山の中の一軒家で、ひひひひだと確実にやられますよ」
と普段なにを書いているのか怪しい作家は、しょうもないことを言い出す。

「せめて、台所に引っ込んだおばあさんはタヌキでしたくらいの方が可愛げがあるが」

「それだと私もタヌキになってしまいますが」

 衣茉はそこで、暑いので今は火のついていないいろりを見ながら呟く。

「……おばあさんがタヌキだと、私のタヌキ具合はどのくらいですかね?」

「タヌキ具合ってなんだ……」