覆面作家と恋せぬ課長(おまけ 完結しました)

 

 やめろ、祝っ、と八尋は橋を渡ろうとする衣茉を抱き止めた。

「危険すぎるだろっ」

 作家ってやつは、作品のためなら、後先考えない危険な人種なのかっ。

 それとも、こいつが危険な女なだけなのかっ?

 ……危険な女とか言うと、妖しい魅力を放ってそうだが。

 なにも放ってはいないが。

 どちらかといえば、違う意味であやしい……と八尋が思ったとき、衣茉が、
「でも課長っ。
 せっかく来たんですし」
と言った。
 
「落ち着け。
 こんな誰もいないとこ、落ちても誰にも発見されないぞっ」

「そうですね。
 どちらかが残らないと、二人で落下しちゃったら、助けも呼べませんね」

「……結局、心中か」
と八尋は呟いて、

「なんで『結局』なんですか?」
と問われる。

 そのとき、おじいさんが何処からともなく、やってきた。

 田舎の人というのは、近くに民家がなくとも、突然現れる。