想空君には、申し訳ない……けど。

「ね、先輩。」

「……うん、それじゃあお願いします。」

「ふふっ、はーい。」

 想空君は上品な微笑みを浮かべて、近くに置いていたスクールバッグを手に取った。

「先輩、行きましょ。」

「う、うん……。」

 やっぱり、慣れないな……男の人と、喋るのは。

 りおくんや大貴君は、いつも一緒にいるから慣れてるだけだった。

 ……りおくんは、ずっと一緒にいるから尚更。

 でもいつまでも、りおくんは私の近くにいてくれるわけじゃない。

 いつか、彼女さんができたら私は離れなきゃいけない。

 どうして私は今、そんな予想もできない事を考えてしまったんだろう。

 ……その答えが分かるのは、もう少し先だった。