クールな幼馴染の、甘い求愛方法。

 彼が悪いわけじゃないけど……拒否反応は、抑えられない。

 ……ダメだ、いつもみたいに落ち着かない。

 もしかして、抱きしめられてしまったから……?

 いつもは腕を掴まれるくらいまでだったから、あんなに密着した事はなかった。

「……鍵、返しに行かなきゃ。」

 落ち着かない呼吸を無理になだめ、力を入れて歩を進める。

 そういえばもう、帰る時間か……。

 不意に窓の外を見ると、もう夕焼けが見えていた。

 少しだけ眩しいと思いながらも、とにかく足を動かす。

 ……本当に、しんどいかも……っ。

 少し歩いた後、やっぱりダメで足が止まる。

 その瞬間、数メートル先の角から“ある人”の姿が見えた。

「っ……りおくんっ……!」

「うらら……って、――!?」

「りおくんっ、りおくんっ……!」

 ぎゅっと、姿を見せたりおくんに抱き着く。

 もう怖さが上限を超えていた。もうしんどかった。

 ただ抱きしめられただけ。そう言われて、馬鹿にされてもいい。

 やっぱり無理なものは、無理なんだっ……。