クールな幼馴染の、甘い求愛方法。

 もうすぐ昇降口に着くところ。

 背後から名前を呼ばれ、反射的に聞き慣れた声に名前を呼ばれた。

「想空君……どうしたの?」

「いえ、先輩を見かけたので声をかけようと思っただけですよ。」

 ふふっと、相変わらず上品な笑みを浮かべる想空君。

 その表情は、いつもよりどこか儚い雰囲気を醸し出していた。

 そしてりおくんに視線を移し、すぐ私に視線を戻して。

「先輩、諦めなくて良かったでしょう? 僕のアドバイス、多少は役に立ちましたか?」

「……うん、すっごく。本当にありがとう、想空君。」

「それなら良かったです。……それでは、僕はここで。」

 まだするべき事が残っているので、と想空君は付け足し踵を返す。

 けどもう一度だけ振り返って、優しくて意地悪い笑みを小さく作った。

「龍己先輩が嫌になったら、僕のところに来てくださいね。」

 嫌になったら……ごめんね想空君、私はきっとそんな事にはならないと思うんだ。

 まだ断言はできないけど、私はやっぱりりおくんが良いから。

 想空君の気持ちはありがたいけど、結局は無下にしてしまった。