人払いをした体育館裏で、八雲くんは足を止めて振り向きました。
サァッと木の葉を揺らす風が吹きましたが、私の顔の熱は冷めません。
「一応言っておきますよ。嫌だったら突き飛ばしてください」
「はっ? な、何が……っ!」
八雲くんは私を壁に追い詰めて、顔の横に肘をつきます。
さらに、顎のラインをなぞるように指を滑らせると、くい、と少し私の顔を上げて――……。
キスを、しました。
「っ!?」
「――……嫌じゃ、ないんだな?」
笑って囁いた八雲くんは、もう一度キスをして、さらにもう一度、と顔を寄せます。
3回目にしてようやく思考が追いついた私は、声にならない悲鳴をあげて、八雲くんの胸を押しました。