「そもそもそいつの話も信じられねぇし……いいか、叶希。好きなもんを簡単に諦めんじゃねぇ」




芹香は首に手を当てて、私を軽く睨みながら言います。

優等生の時の私なら、怯んでいたかもしれませんが……友達として付き合ってきた今なら、これが八雲くんと同じ瞳だと分かります。


芹香も、友達には優しい人ですから。




「……うん。そだね。不良なら、もうちょっとしぶとくなんないとな」


「図太くなくて、憎まれ役が務まるかっての。弱気になった罰として、私になんか奢れ」


「えぇ? おしるこでいい? 近くの自販機で売ってんの見つけたんだ」


「バカかお前、そんなもん飲むわけねぇだろ。コーヒーだコーヒー」




そんな風に軽口を叩きながら、私は芹香と、学校を抜け出したのでした。