【中】今さら、付き合いたいなんて。

……本当に、八雲くんが助けに来てくれるなんて。

嬉しいと思うのは、ダメなのでしょうか。


でも。でも、今だけは、八雲くんに泣きつきたいのです。




「八雲くん……っ！　こわ、怖かったですっ……！」


「叶希……もう、大丈夫だ」




もつれる足で立ち上がって、ブレザーに包まれた胸に縋りつくと、八雲くんは私を抱き留めてくれました。

その温もりにホッとして、ぽろぽろと涙がこぼれます。




「だ、誰も……っ、来て、くれないって……！　た、助けてもらえないって、私……っ！」


「……」




八雲くんは優しく私の背中を撫でて、ゆっくり慰めてくれました。

言葉数は少なくても、包み込んでくれる腕が、全てを受け止めてくれる胸が温かいから、私の心は癒やされていきます。