Side:馬見塚(まみづか)八雲(やくも)




「ま、馬見塚(まみづか)くんっ……あの、これ……!」


「はい」




担任に頼まれた雑用を終えて、ようやく帰れるという時に部坂(へさか)という奴が本を突き出してきた。

何故か教室に残ってチラチラ視線を寄越してくるなと思えば、俺に用事か。

さっさと話せばいいものを。




「こ、この間話した小説なんだけど、今日、持ってきてたんだ。よかったら、どうぞ」


「あぁ、ありがとうございます。お借りしますね」


「う、うんっ。そ、それじゃあ、さよなら!」


「はい、さようなら」




適当に話を合わせただけで全く興味は無いんだが、と押しつけられた本を見る。

……いや、この表紙。前に叶希(とき)が読んでたのを見た気がするな。

目は通してみるか。