【中】今さら、付き合いたいなんて。



「ねぇ、それどういう……、っ!」




信じられない思いで聞き返そうとすると、教室から出てくる八雲くんが、遠目に見えました。


今まで、部坂さんと一緒に教室に……?

そ、そんな。


まさか、本当に……。


扉を閉めた八雲くんが、こちらに顔を向けます。

遠目に、八雲くんと目が合った気がして、じわりと涙が込み上げてくるのを感じながら、私は俯いて階段を下りました。


見たくない。見たくない……!




「あ、叶希。悪い、待たせ……」


「――ごめん、先帰るっ」


「は? お、おい、叶希っ!」




1階で芹香と会いながらも、私の足は止まらず、素早く靴を履き替えて、走り去るように学校を後にします。


……八雲くんが、他の女の子と付き合ったなんて。

信じたく、ないです。




「ふ、ぅ……っ」