【中】今さら、付き合いたいなんて。

「はぁ? いつ調子に乗ったって言うんだよ、離せって!」




心臓もバクバクするくらい、内心で焦って、必死に抵抗します。

踏ん張っていても、ぐいぐいと引っ張る男性の力に負けそうになって、誰か助けてくれないかと、まばらにいる人を見ました。


しかし、皆さんがぱっと目を逸らしてしまいます。

私が不良の装いをしているから、でしょうか……?




「クソッ、やめろって……!」


「――離してもらえませんか。俺の恋人なので」


「「!」」


「へ……?」




ぎゅっと目を瞑って全身に力を入れると、聞こえるはずのない、八雲くんの声がしました。

腕を引っ張る力も弱くなって、ぽかんと目を開けると、八雲くんが男性の腕を掴んでいます。




「や、八雲……?」


「走るぞ」


「えっ?」