「なぁ、叶希ってさ」
「うん、何?」
「あの優等生に気があんの?」
「ぅえっ、な、なんでっ!?」
不揃いなテンポで階段を下りていると、芹香が急に切り込んできてバランスを崩しかけました。
赤くなった頬を手の甲で隠すと、芹香は半目になって「分かりやす」と呟きます。
「お前、あいつにはよく絡むだろ?」
「そ、そんなことないしっ! ほどほどでしょっ」
「私の次に絡むのが?」
「そ、それは他に話すやつがいないからっ」
不良の私が話せる相手は、芹香と八雲くんだけ。
クラスメイトの皆さんとは必要最低限しか話さないので、順位をつければ必然的にそうなってしまうのです。
私は少しの間口を閉ざして、目を瞑りながら言いました。



