顔は、上げられませんでした。

八雲くんも、続ける言葉は無く。


温かい手が離れると、テンポの遅い足音がしました。

遠ざかっていくその音を、私はぎゅっと目を瞑りながら聞き……。


足音が完全に聞こえなくなると、賞状筒を抱いて、膝から崩れ落ちました。




「うぁぁぁ……っ!」




初恋でした。

最初は、不良なんて意味の分からない存在だと思っていたのに。




『またお前かよ。面倒くせぇな』


『優等生がこんな治安悪いとこで何してんだ?』


『は? 迷った? お前、頭良いくせに……』


『優等生も色々あんのな……叶希、理不尽なこと言われたら俺に言えよ。力、貸してやる』