優等生なら壇上を見ていないといけないのに、俺の視線は空席ばかりを追った。

あいつなら、“入学式を欠席するなんてありえません”と言って、ちゃんと出席しているはずだ。

サボっているなら、同姓同名の別人なのか……?


動揺が、期待へ。

期待が、落胆へ。


入学式が終わって教室に戻った時には、もう諦めの境地だった。




ガラッ


「與那城さん? おはようございます」


「はよーございまーす」




やる気の無い適当な声は、あいつの面影を少ししか残していない。

派手な金髪も、それを巻くことも、化粧をすることも、あいつの辞書にはないはずだ。


それなのに。




「叶、希?」


八雲(やくも)、くん……」




席順表を二度見したあいつは、俺を見て動揺した。