気持ちが逸ったように、桜の木が淡く色付いて中学卒業を祝しています。
桜の隙間から見える空も、私の気持ちとは裏腹に青く澄み渡っていました。
「叶希」
「はい」
金髪を無造作に遊ばせた八雲くんが、私の名前を呼びます。
賞状筒を握り、俯いた八雲くんの表情は、私の視界が涙で滲んでいるせいか、よく見えませんでした。
「……」
「……」
上手く言葉が出ない理由は、分かっています。
きっと、最後となる言葉を慎重に、慎重に選んでくれているのでしょう。
八雲くんは素行の悪い不良だけど、友達には優しい人だと知っています。
初めて言葉を交わした2年の時から、ゆっくりと距離を縮めてきたのですから。