Side:馬見塚(まみづか)八雲(やくも)




『さようなら……っ』




涙混じりの声に、震えた華奢な肩。

賞状筒を握った手は、白くなるまで力が込められていて。

一線を越えられないまま、さらりとした黒髪を撫でた。


最後に触れた、あの感触を思い出せなくなる前に、髪を黒く染め直す。



制服をちゃんと着ると、窮屈だなと感じた。

少し前までは我慢せずに着崩していたが、今日からはこの窮屈さに慣れていく。


少しでも、あいつの世界が見えるように。




「おはようございます」


「お、おはようございます……!」




優等生の手本は、中学で隣にいたあいつ。

同じタイミングで席順表を見た奴に、必要の無い愛想を振りまいて、丁寧に喋って、興味の無いことを聞く。