「あの」
八雲くんの小さな声が聞こえます。
これは間違いなく、私に話しかけてますよね!?
「な、何っ、なんか文句ある?」
八雲くんを睨みつけるように視線を戻しながら、同じく小声で答えました。
すると、八雲くんは全く動じずに視線を返して口を開きます。
「いいえ? 可愛いなと思っただけです」
「かわっ……!?」
予想していた言葉のどれとも違う変化球に、思わず赤面してしまいました。
私を見た八雲くんは小さく笑って、小首を傾げます。
「“オシャレ”、似合ってますよ」
「っ……!」
八雲くんに言われると、からかいが混じっているように聞こえます。
からかい混じりでも、冗談でも、好きな人にそんなことを言われたら鼓動が加速してしまうのですが。



