「……」
声をかけられたらどうしようと、バクバクな心臓を押さえて冷や汗をかいていても、八雲くんの声は聞こえてきません。
それにいくらかホッとして、でも顔の向きを戻すことができずにじっとしていると、どんどん自己紹介が進んでいきました。
「部坂初音です。えっと……よろしくお願いします!」
私の斜め前の女子が緊張した様子でそう言うと、次に八雲くんが立ち上がります。
「馬見塚八雲です。よろしくお願いします」
や、八雲くんが敬語で話してます……!?
シンプルな内容はある種八雲くんらしいと言えますが、言葉遣いが異質すぎて思わず振り向きそうになりました。



