紫陽花が泣く頃に



「なんで逃げるの?」

俺たちは濡れていることも気にせずに足を止めた。

「あの薬はなに? 正直に言ってよ」

ゆっくりと美憂の身体に触れて、こっちを向かせた。どこかで雷が鳴っている。まるでなにかの前触れのように。

「ごめん、千紘くん……」

「ごめんって?」

聞きたいのに、聞きたくないと思った。そのくらい美憂はひどく悲しい瞳をしていた

「私ね、心臓の病気なの」

雷鳴と同じくらい自分の鼓動が大きく鳴った。

「ずっと黙っていて、ごめんなさい……っ」

泣きじゃくる美憂の身体をそっと抱きしめた。

やっぱり体温は氷みたいに冷えていた。