紫陽花が泣く頃に



* * *



同じだと思った。

さ迷うような不安定さも、感情に押し潰されそうな顔も、柴田は俺と同じ瞳をしている。


「あ、彼氏がきたよ!」

次の日学校に行くと、クラスメートに指をさされた。その中心には菅野がいて、ああだこうだと俺と柴田のことをみんなに説明している。

なんで管野はこんなにも、柴田に執着してるんだ? まさか本当は好きだったりして? だとしたら、あまりに幼稚すぎるだろ。

席に着くと、すでに柴田の姿があった。一足先に噂の(まと)にさせられている彼女はうんざりいう顔で、耳にイヤホンを装着していた。

――『……美憂は私の双子の姉だよ』 

柴田と美憂になにか関係があることはわかっていた。それで、妹なのだろうということも。

名字が違うという点において疑問はあるけれど、柴田を美憂の妹だと認めてしまったほうが辻褄が合うことが多い。

「おはよう」

柴田と目が合ったので、一応挨拶をした。どうせ聞こえてないし無視されると思っていたのに、柴田は片方のイヤホンを外して「……うん、おはよ」と返してくれた。

「悪かったな、注目されることになっちゃって」

柴田の言うとおり、管野の挑発に乗らずに『俺たちはなにもない』と断言すべきだった。でもあいつらがただのイタズラじゃ済まないことを柴田にしてて、頭に血がのぼった。許せることじゃなかった。

「私が巻き込んだんだから、小暮が謝るのは違うでしょ」

「うん。でもごめん」

「いいよ。噂なんてほっとけば」

「そうだな。あとお節介かもしれないけど、家の鍵は変えたほうがいいと思う。返ってきたとはいえ、管野のことだから合鍵とか作られてたら怖いだろ」

「……合鍵って、そんなにすぐ作れるものなの?」

「知識さえあれば粘土とかで型どって作れなくはないよ。なんか管野ならやりそうじゃん」

「うん。やりそう。あんまり大事にしたくなかったけど、今日お父さんに相談してみるよ」

「そのほうがいい」

管野はチラチラと俺たちのほうを見ていた。なにを話しているのか気になってるんだろう。