紫陽花が泣く頃に



なんで私、雨に濡れながら、笑われてるんだろう。

私じゃなくて、美憂だったら、こんなことにはならないのに。

なんで誰からも好かれていた美憂と違って、私はこんなに人から嫌われちゃうんだろう。

「大人しくなったから、チャンスじゃね」

男たちの手が私へと伸びてくる。強い力で胸を触られた。冷たい指が容赦なく制服の中に入ってきても、沸き上がってくるのは〝なにもかもどうでもいい〟という感情だけだった。

私は私のことが大切じゃないから、周りからも大切にされなくて当然。

私なんか、私なんて……。

「おい、お前らなにしてんだよ!」

だれかが男たちの手を止めた。私のことを助けるように間に入ってきてくれた背中。

ああ、なんでだろう。べつに呼んでないし、助けてほしいわけでもないのに、なんで小暮が来た瞬間に、泣きそうになったんだろうか。

「なんだよ、小暮。また邪魔する気か?」

菅野は慌てることなく苦笑していた。おそらく小暮は喧嘩なんてしたことがないだろうから、この状況は不利だ。頭のいい彼ならば考えなくてもわかることなのに、小暮は強い言葉を使い続けた。

「こんなことしてどうなるかわかってんのかよ。学校でしてる口喧嘩とは訳が違うだろ」

「こいつがなめたことばっかり言ってるから悪いんだよ。なんなら小暮も混ざる? 童貞卒業できるかもよ?」

「いい加減にしろよ、管野」

「は? 俺に指図してんの?」

「そうだよ」

平和主義者なくせに、こうやって首を突っ込むことを一番面倒くさがるような性格のくせに、小暮は私のことを守るように立っている。

「なんでそんなに柴田のことをかばうわけ? もしかしてお前らできてんの?」

「だったら?」

「ふ、はは。マジか! 根暗同士超お似合いじゃん!」

「………」

「あーいいこと聞いたから、もういいわ。ほら、これ返してやるよ」

チャリンと管野が投げたのは、うちの鍵だった。男たちを引き連れて帰っていく管野を見ながら、静かに鍵を拾った。