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そんなやり取りを思い出しながら、私はポリ袋に入っている最後のクッキーを口の中に入れた。
私は小暮がパンダのクッキーを手に取ることも、それを見て美憂と重ね合わせることも、わかっていた。
わかっていて、わざとやった。
どんな反応をして、どのくらい美憂の存在が大きいのかを、確かめたかった。
……私って、性格悪いな。甘いはずのクッキーが、ひどく苦く感じる。
美憂と小暮が付き合いはじめたのは、クッキー作りを教えたあとのことだった。
美憂の恋が成就したことは素直に嬉しかったし、『よかったね』と祝福した言葉に嘘はなかった。
だけどそれ以降、小暮の話ばかりが増えて。口を開くたびに『千紘くんが、千紘くんはね』と言われることは、正直あんまりおもしろくはなかった。
退屈だった。どうでもよかった。
冷めていく感情とは真逆に、彼の話をする美憂はとても幸せそうだった。
神様は生まれながらにして、美憂にひとつの大きなものを背負わせた。
だから、美憂はそれ以外のものなら全部持っているし、神様も与えようとしている。
そんな卑屈なことを考えてしまう自分が大嫌いだ。



