「あ、そうだ。あのね……」
突然美憂が言いづらそうに、指を擦るような仕草をした。
「今日、後輩の男の子に付き合ってくださいって言われたの。でもすぐに走って帰っちゃって……」
美憂がたくさんの人に告白されていることは知っていたけれど、こうして相談されたのは初めてだった。
「明日、返事をしようと思ってるんだけど、なんて返せばいいと思う?」
なんとなく、そこに美憂なりの意図があるように感じた。美憂と親しくなって、俺の世界は変わった。どうせ気まぐれに声をかけてきただけだと思っていたのに、その関係は一年以上も続いている。
俺は美憂が好きだ。でも俺にとっては美憂は高嶺の花すぎる。
「俺に聞かれてもわかんないよ……」
弱々しく答えると、美憂は「じゃあ、オッケーしてもいいんだね!」と珍しく怒った。
「そ、それは困る」
「なんで困るの?」
美憂は俺に言ってほしい言葉があるんだろう。
彼女は誰にでも分け隔てなく接するけれど、俺以外の男の家には遊びに行かないし、気を持たせるようなことも言わない。
つまりはそれは総合的に判断すれば、俺は期待してもいいということなのかもしれない。
俺はカッコよくないし、美憂とは釣り合わない。だけど美憂のことを他の人には取られたくなかった。
「お、俺と付き合ってください!」
一世一代の告白だった。本当はタイミングとか、シチュエーションとか、もっと考えるべきだったと思う。でも奥手な俺にはこれが精いっぱいで、美憂の後押しがなければ絶対に言えなかった。
「ふふ、はい。よろしくお願いします」
美憂は口元に手を当てて、照れていた。可愛かった。今日から彼女になるんだと思うと叫びたいほど嬉しくて、美憂のことを一生守っていこうと決めた瞬間だった――。



