紫陽花が泣く頃に




一方の私はずっとショートカットだし、制服を着てなければ男子に間違われることもある。それによって、周りはよくこんなことを言ってきた。

『美憂ちゃんと全然似てないよね』
『美憂ちゃんは可愛いのに』
『本当に美憂ちゃんと双子なの?』

なにをしても、どこにいても、美憂と比較された。だから美憂と違う学校になり、耳障りなことを言われなくなった今、色んなことから解放された気持ちのほうが強くて気が楽だ。でも美憂は私と離れてしまったことを今でも寂しく思ってくれている。

私たちは見た目だけじゃなくて、考え方も違う。

「私には和香ちゃんさえいればいいんだ。和香ちゃんのことが本当に大好きだもん」

美憂は日頃から恥ずかしげもなく、くっついてくる。私は「はいはい」と流しながら、美憂の好きなオレンジジュースを注いであげた。

「あ、そうだ、聞いて。私ね、友達ができたんだよ!」

「そんなの前からいっぱいいるじゃん」

「そうなんだけど、今までの友達とはちょっと違うの。なんていうか、和香ちゃんに似てるんだ」

「え、私に?」

「うん。いつもぼんやりしてて、ちょっとだけミステリアスな雰囲気もあって、ひとりでも全然平気って感じの人なんだ」

ぼんやり、ミステリアス、ひとりでも平気って……。私はそんなふうに思われていたのかと、思わず苦笑してしまった。

「それでね、この前一緒にあおちょーに行ったんだ」

「あおちょー? なにそれ」

「花ノ咲にできた雑貨屋さんだよ」

「へえ」

私はそういう情報には疎い。

今までの交友関係は、全部美憂を介して成り立っていた。美憂が隣にいると、自分も人気者になったような気分になるけれど、誰も私と仲良くしたいと思う人はいなかった。

比べられるのが嫌だった。恥ずかしくて惨めだった。だから私は、美憂と真逆になろうと決めた。髪の毛を短くして、女の子らしさを捨てて、気も強くなった。そうしたら、本当の自分がわからなくなった。