紫陽花が泣く頃に



スーパーを出る頃には、すっかり夕暮れになっていた。オレンジ色に染まっている町を彼とゆっくり歩く。

「こんなに買う必要あった?」

「安かったからついでだよ。荷物持ちもいるし」

「こっちはでかいペットボトル二本も入ってるんだけど」

私の右手と小暮の左手には、ひとつずつのエコバッグ。彼は最近、明るくなった。文句も言うようになった。

私は小暮に心を許している。彼もきっと私に心を開いてくれている。これから作ろうとしているカレーは小暮の好きな辛口。わざわざ聞かなくても、味の好みもわかるようになってきた。

「そっちの袋も持とうか?」

そして、やっぱり彼はなんだかんだ優しいのだ。

今なら、美憂がこの人を好きになった理由がわかる。隣にいると、安心できる。小暮となら、この先なにがあっても、支え合って生きていけるんじゃないかって思えるくらい。

匂いが好き、声が好き、雰囲気が好き、たまにぼんやりしてるところが好き。

そういう〝好き〟を、美憂はたくさん小暮から感じていたんだろう。
 
それが、わかるようになったということは、きっと私も小暮のことが好きなんだ。

好きになってしまったんだと思う。