傘のいらない帰り道。私は小暮と帰っていた。約束しているわけじゃないのに、一緒に帰ることが当たり前になってきている。
「今日はどうする?」
「立て続けだと柴田が大変だろ?」
「大変なら最初から呼ばないよ」
私たちは付き合っていない。だけど小暮はうちにご飯を食べにくる。
あれから彼はうちの両親とも仲良しで、連絡先まで交換し合っている。
お母さんはお菓子を作るたびに『小暮くんにあげて』と言ってくるし、お父さんは地方に行くとなぜかお酒のつまみになるようなお土産ばかりを買ってきて『二十歳になったら一緒に飲もう』と彼を誘っていたりする。
「ちょっとスーパーに寄ってもいい? なにか食べたいものとかある?」
リクエストしてくれたほうが、私も作りやすい。
「うーん。とくにないかも」
「あんたって、本当に食に興味がないよね」
「興味がないっていうか、今まで腹いっぱいになればなんでもいいって思ってたから」
「もう、だから美憂が……」
言いかけて、わざとらしく咳払いをした。当然「美憂がなに?」と聞き返されたけれど、「早く食材を買うよ!」と、無理やり誤魔化した。
小暮と泣きながら手紙を読んだあの日から、私は今でも便箋に目を通すことがある。
私の宝物であり、美憂から任された約束を守っていきたい。



