紫陽花が泣く頃に



そんなかけがえのない千紘くんに、私からひとつだけお願いがあります。

私の妹のことです。

妹は千紘くんとよく似ていて、ナイーブで感情を表に出すのが下手な子です。

妹に甘えてばかりの私が唯一、姉らしいことをしてあげられるとしたら……それは妹を千紘くんに会わせてあげることだと思ってます。

手紙を読んだということはお母さんから水飴症候群の真実を聞いたのだと思います。

ごめんなさい。千紘くんに話したことは嘘でした。

お母さんが作り話をしていることには気づいていたけれど、その話がとても素敵だったから、つい千紘くんにも話してしまいました。

私はもう町の様子を知ることはできないけれど、きっと言い伝えのように雨は降り続けていると思います。

降らせてくださいと天国に行ったら、真っ先に神様にお願いするつもりだから。

その雨が、きっとふたりを引き合わせてくれるでしょう。

不器用なところも、人に頼ることが苦手なところも、妹と千紘くんはそっくりです。

いつかその似ているところを共有して、足りないところをふたりで埋め合うこともできると思うのです。

そうやってお互い少しずつ距離を縮めながら、私に会いに来てくれると信じて、この手紙をお母さんに託します。

千紘くん。こんなことを頼むのはおかしいかもしれないけれど、和香ちゃんのことをよろしくお願いします。

千紘くん、きみに会えて本当によかった。

千紘くん、本当に本当にありがとう。

これから千紘くんに、たくさんの幸せが訪れるように遠い空から見守っています。


高木美憂