紫陽花が泣く頃に




小暮千紘くんへ


急な手紙で、びっくりしたでしょう?

どうしても伝えたいことがあったので、こうして病室で手紙を書いています。

千紘くん。私たちの出逢いを覚えていますか?

中学一年生の時に、私から声をかけたのがきっかけだったね。

正直に言うと、千紘くんはとても怖い人だと思ってました。

いつもひとりでいて、周りが騒がしいと少し嫌な顔をしていたのを知っていたからです。

でも生き物係でもないのに、教室にいた金魚にエサをあげている千紘くんを見て、私は友達になりたいと思いました。

今でも時々、勇気を出して千紘くんに声をかけた日のことを思い出します。

あれがなかったら、私たちはただのクラスメートで終わっていたかもしれない。

そう思うと、無性に十三歳の自分を褒めたくなります。

それから友達関係がはじまって、千紘くんのことを知れば知るほど、魅力的な人だと思いました。

頭がいいのにそれを周りに自慢したりしないし、良いところがたくさんあるのになぜか自分に自信がない。

それでも誰よりも思いやりをもったあなたに惹かれました。千紘くんは、私の初恋です。

初めて好きになった人と両思いになれた私は本当に幸せだったと思う。

色々な人に支えられて恵まれた人生だったけれど、千紘くんに出逢えたことが私にとっての一番のプレゼントでした。

千紘くん、私に恋を教えてくれてありがとう。

私を彼女にしてくれてありがとう。

千紘くん、とてもとても大好きでした。