病院に運ばれてから数日後、頭の包帯が外れた。学校にも目立たずに通えるようになり、俺の席の隣には今日も柴田が座ってる。
「頭は平気だったけど、腕の擦り傷が風呂で滲みるんだよ」
「私もそうだよ。ほらここ」
「いや、俺のほうが化膿してヤバいから」
「なにそれ、ケガ自慢?」
俺を心配して泣いた時は可愛かったのに、今は無愛想で可愛げがない柴田に戻っている。
「頭も打ってないのに気絶してたくせに」
「そっち助け方が下手くそだったからじゃないの?」
こんな言い合いができるくらいに俺たちの関係は変わった。さらに、もうひとつあの事故によって変化したことがある。それは、柴田が自分のことを話してくれるようになったことだ。
柴田の両親が離婚していたことや、父親に引き取られて一緒に暮らしていること。今まで律子さんとは疎遠になりつつあったけれど、これからは頻繁に会う約束をしてること。そんなことを、胸のつかえが取れたように教えてくれた。
柴田は少しずつ前に進みはじめた。
俺はどうだろう。
美憂は立ち止まったままの俺を見て、情けないと笑うだろうか。