紫陽花が泣く頃に




週末。病室のドアをノックして入ると、ベッドの横に黄色い千羽鶴が吊るされていた。

「これ、どうしたの?」

「友達が持ってきてくれたんだ。すごいよね。もらった瞬間、泣きそうになっちゃった」

千羽鶴を折ってくれたのは、クラスメートの女子たちだと言う。美憂の病気のことは、もちろん学校に知れ渡っている。彼女の人柄も相まって、お見舞いに訪れる人は後を絶たない。

「お母さんが千紘くんに励まされたって言ってたよ。優しくて思いやりがある人だねって褒めてた」

美憂は自分のことのように、嬉しそうにしていた。

「今度、お父さんのことも紹介させて。前に来てくれた時は千紘くんが学校に行ってる時間だったから」

「運送の仕事をしてるんだっけ?」

「うん。今は名古屋にいるって言ってた。帰ってきたらまた病室に来てくれると思うから、千紘くんの時間に合わせられるように私が調整するね」

それはそれで心構えが必要というか……。律子さんの時より緊張してしまいそうだ。

「そういえば妹は?」

あんなに仲良さそうなイメージだったのに、妹らしき人は一度も美憂の病室には来ていない。

「……実は今、ちょっと喧嘩してて」

美憂がぽつりと呟いた。

「よくするの?」

「小さな喧嘩なら、たまにね。でも結局いつも私が妹に泣きついて仲直りのパターンが多いかな」

「じゃあ、今回もそれ?」

「うーん、今回はどうかな。私、ずっと妹の気持ちなんて考えずに突っ走ってた気がする。だから仲直りするを資格なんて、もうないかもしれないよ」

彼女は窓からの紫陽花を見つめていた。頭の中で妹と過ごした日々を思い出しているのか、とても寂しそうな顔をしていた。