それなのに、
今日から一週間すれ違いの日々だ。

ろくに会話も出来ず顔を合わす時間も減る。

「今週一週間忙しくなると、香世様の事心配ですよね?心配なら俺がちょくちょく様子見に行って報告しましょうか?」

香世の安否は心配だが、俺以外の男と親しくなって欲しくは無い。

「いや、大丈夫だ。
香世だって子供じゃ無い、自由に過ごしたいだろう。」
正臣は香世の気持ちを慮る。

「それもそうっすね。
だけど香世様、お綺麗だから変な虫が付かないように気を付けて下さいよー。」

お前にだけは言われたく無いが…
心で思いながらどうするべきか考え込む。

「前田、1つ頼みがある。
帰りに合わせて手土産を買っておいてくれないか?」

「香世様にですね。
任せて下さい。女子は甘い物が好きだから、
きっと喜びますよ。」

「いま流行のカステラを用意しとけ。」
 
最近できた和菓子屋のカステラが評判が良くて、午前中ですぐに売れ切れてしまうのだとタマキから聞いたばかりだ。

「かしこまりました。この前田、命に賭けても手に入れて見せます。」

「別に…命は掛けなくていい…」
呆れ顔で正臣は言う。

実は前田も元々は孤児院育ちだ。

1言えば10分かるほど頭が切れるし、
積極性と探究心も申し分無く、1年ほど前から運転手として雇っている。

香世を探し出す為にいろいろ手伝ってもらった事もあり、俺の香世への想いを唯一知っている奴でもある。