「行ってくる。」

玄関で、香世は正臣を女中と共に送り出す。

「行ってらっしゃいませ。」

軍帽を手渡し頭を下げると、
香世の頭を優しくポンポンと撫ぜて正臣は車に乗り込んだ。

咄嗟に車に駆け寄って、
「お気を付けて、お帰りをお待ちしております。」
香世は少しでも安心して欲しいと、
笑顔でそう正臣に伝える。

正臣が微笑みを浮かべ車が動き出す。