「俺が不安なのは…ただ一つ……
香世が…目を離した隙にいなくなってしまうんじゃないかと…
そう思うと…とてつも無い不安に襲われる。」

正臣が…男の人が、
心の中をこれほどまでに明け透けに見せる事に驚き戸惑う。

正臣はため息を一つ吐き、香世を解放する。

「すまない…。
自由意志だと言いながら…
これでは束縛しているようなものだな。」

離れてしまう正臣に少しの寂しさを感じながら、

「ご心配なさらなくても…
ここ以外、私の居場所はどこにもありませんから…。帰る場所など既に無いのです。」

香世は寂しく笑う。

「ならば、ずっとここにいろ。」

熱い目で見下ろされ、頬をサラッと撫でられ
香世は思わずビクッとしてしまう。

正臣は軍服を自ら取り、
バサっと羽織って自分でボタンを閉めていく。

香世はハッと我に返り、
再び支度の手伝いを再開する。

一つずつ装飾を軍服に付けながら、
どうしても正臣の事を意識し過ぎてしまう。

もはや顔を見る事も出来ない。

警棒、銃、短剣を順番に渡す。
短剣はやっぱり怖くて触るだけで手が震えてしまう。

「無理しなくていい。」

正臣は短剣をサッと奪い取り腰のベルトに納める。

「ありがとう。」
そう告げ、香世から離れて行く。

こんなにも優しく繊細な人なのに、
身に付けている全ては物騒で…
この人には不似合いだと思ってしまう自分がいる。

どれだけの重荷を背負って、
日々、命を削って任務を遂行しているのだろうか…心配にもなる。

どうか、ご無事にお帰り下さい。
と、香世は祈らずにはいられなかった。