「龍一ぼっちゃま。
男子台所に入るべからず、ですよ。
さあさあ、居間でお行儀良く待っていて下さいな。」
マサが香世に抱きついて離れない龍一を、
なんとか抱き上げ居間の方へ連れて行く。
「嫌だ!お姉様、今日いなくなっちゃうんでしょ。僕が連れて行かないでってお願いするんだ。だから、絶対、香世姉様のお側を離れないんだ。」
龍一はマサの腕から逃げようとバタバタする。
「龍ちゃん、そんなに暴れては危ないわ。
じゃあ、姉様とお歌を歌って遊びましょ。
マサさん、悪いけど後をお願いします。」
「かしこまりました。」
マサは龍一を下ろし台所に戻って来る。
香世と龍一は手を繋ぎピアノがあった部屋へ行く。
かつて、母が愛したピアノは1週間前に父によって質に出されてしまった。
日に日に寂しくなっていく室内を見ると、
家財を売ってまでしないとお金が無い事が目に見えて分かる。
それでも龍一は元気よく、『さくら』の歌を歌い始める。
どうか、龍ちゃんだけでも幸せであって欲しいと香世は願って止まない。
男子台所に入るべからず、ですよ。
さあさあ、居間でお行儀良く待っていて下さいな。」
マサが香世に抱きついて離れない龍一を、
なんとか抱き上げ居間の方へ連れて行く。
「嫌だ!お姉様、今日いなくなっちゃうんでしょ。僕が連れて行かないでってお願いするんだ。だから、絶対、香世姉様のお側を離れないんだ。」
龍一はマサの腕から逃げようとバタバタする。
「龍ちゃん、そんなに暴れては危ないわ。
じゃあ、姉様とお歌を歌って遊びましょ。
マサさん、悪いけど後をお願いします。」
「かしこまりました。」
マサは龍一を下ろし台所に戻って来る。
香世と龍一は手を繋ぎピアノがあった部屋へ行く。
かつて、母が愛したピアノは1週間前に父によって質に出されてしまった。
日に日に寂しくなっていく室内を見ると、
家財を売ってまでしないとお金が無い事が目に見えて分かる。
それでも龍一は元気よく、『さくら』の歌を歌い始める。
どうか、龍ちゃんだけでも幸せであって欲しいと香世は願って止まない。