冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

そう言えば、お花見をしたのは遠い昔…
家族で近くのお宮に言ってみたらし団子を食べた思い出がある。

龍一はまだ生まれていなかった頃…

あの幸せな時間は二度と戻らないけど…

「お花見楽しみです…。」
香世は遠い思い出を懐かしく思う。

「香世は何処行きたい所は無いのか?」

正臣から不意に聞かれるが、
行きたい所?

頭にパッと浮かぶのは龍一の事だけで、
行きたい場所も、いつか龍一を連れて行ってあげたかった動物園くらいだ。

「…特には…。」

香世の心を動かすには一筋縄ではいかないな…と、
遠い目をして窓の景色を見ている香世を運転しながらチラリと覗き見る。

…だからとて諦めはしないが。
いつか香世の心を手に入れたいと正臣は強く思う。