冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

香世はさっきよりもドキドキドキ高鳴る胸を、何とか気付かれないように小さくなって夕飯を食べ進める。

先程、正臣は香世に役目があると言っていたがそれは何だろう?

香世に出来る事は限られている。

家事全般に、ピアノやお琴、華道に茶道一通りの淑女の嗜みは習ったが、どれも趣味の範囲内で秀でている訳では無い。

ましてや軍人の二階堂には不要な教養だろう…。
食べながら香世はひたすら自分の役割について考える。

食事が終わった正臣が香世の食べ終わるのを眺めている事に気付く。

急いで食べなければと、
香世は黙々と箸を進めてなんとか食べ終えた。

それを見計らって正臣が香世に告げる。

「香世、明日から真子が学校へ行くまでの間、読み書きそろばんを教えてやってくれ。
多少の暇つぶしにはなるであろう。」

正臣も香世の事を思案していたようで、
そう言ってくる。

「はい、分かりました。」

「後、お前の役割だが……。」

「はい…。」