冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

2人で片付けを終え、それぞれお風呂に入り、寝支度をしていつものように布団に入る 。

ここ数週間で当たり前のようになってきた添い寝は、香世にとってはドキドキもするが不思議と安心感に包まれて幸せを感じるようになっていた。

フワッと後ろから正臣に抱きしめられて、
ドキンと鼓動が高まる。

「香世、抱いても良いか?」

えっ⁉︎

それは…抱きしめると言う事?

……では無い⁉︎香世は固まる。

何につけても返答を求めてくれるのは正臣の誠実さだけれども、こう言う事に関しては強引にしてくれて良いのにと、香世は頭の片隅で思う。

こくんと遠慮気味に頷くと、
うなじに口付けをされビックッと肩が揺れる。
仰向けにされて顔を覗かれたと思うと、
躊躇いがちに額に頬に唇に優しく口付けが
降り注ぐ。

香世はギュッと目を瞑り未知の世界に怯える。

「…怖いのか?」

正臣に組み敷かれて見下ろされながら、
バクバクと張り裂けそうな胸に手を置いて香世はぶんぶんと首を横に振る。

「怖いのは正臣さんじゃ無くて…この先を…その……知らない事が怖いだけです…。」

じっと正臣に見つめられて、
「分かった。香世が嫌がる事はしない。
出来るだけ痛い思いをさせたくないから、
力を抜いて全て俺に預けろ。」

香世はこくんと頷くと、
「私は…何をすれば…?」