「父から聞かなかったか?
香世にどうして欲しいか決めて欲しいんだ。
香世の会社に入って松下の下で働くのもありだと思っている。
四六時中香世の側に居られるしな。」

「どんな風にお父様にお話ししたのですか?
簡単にご実家を捨てたりしないで下さい。
皆さんが悲しみます。」
香世は心配顔で正臣を見上げる。

「そのぐらい本気だって事を示したかった。で、香世の答えは?」

正臣は、また一歩と香世に近付いて来る。

「えっと…もうしばらくは軍人でいて欲しいなと思います。
お父様からも正臣様が軍にとって必要な人だって事が凄くよく伝わって来ましたし…
あまりに…可哀想でしたから。」

「香世は優し過ぎるな。
分かった。
もうしばらくは軍人を続ける。
だけど、結婚は早めるぞ。
もう、いっ時だって待ちたく無い。」

そう言って、息のかかる位近くに来た正臣が
香世を引き寄せ抱き締める。

「早く香世を俺のものにしたいのだ。」

「もう、とっくに正臣様のものですよ?」

「そうなのか⁉︎」

2人見つめ合い笑い合う。

「頭痛は大丈夫か?」
正臣の手が頭を撫ぜ髪に触れる。

こくんと香世は頷き、
正臣も安堵の顔を見せる。

「傷口は傷まないか?」
前髪を掻き分け額の傷にそっと触れる。

また、香世は笑顔でこくんと頷く。

香世の唇をそっと撫ぜるように正臣が触れてくる。
「口付けしてもいいか?」
そっとそう聞いてくるから
香世はふふっと笑いこくんと頷こうとする手前で、
正臣にクイっと顎をすくわれ唇を塞がれる。

「……っん…。」
香世は急速に奪われた唇に戸惑いながら、
何度となく角度を変えて唇を重ねられる。

空気を吸うのもままならず自然と息が荒くなってしまう。

「あ……っん……。」
息を継ぎたくて少し開けた唇に
容赦なく舌が滑り込み口内を舐め上げられる。

やっと唇が離れた時には香世は立っていられないくらいで、思わず正臣にしがみついてしまっていた。

抱き止めてくれる逞しい二の腕に
もたれながら息を整える。