冷酷な軍人は没落令嬢をこよなく愛す

昼前に思わぬ人が訪れる。

ガラガラガラガラと、
病室の扉が重々しく開いてドキンと鼓動が踊る。

正臣様のお父様と…
眼鏡を掛けた付き人の人…
あれ⁉︎どこかで会った事が…。

どこだろう?
…あれは…花街から正臣様が救い出してくれた日いた人だ。

そう思うと、少しだけ重い空気が軽くなった気がした。

ベッドの上で頭を下げて出迎える。

「昨日は突然伺い驚かせてしまい、
大変申し訳ありませんでした。
体調の方は大丈夫ですか?」
眼鏡の男がこちらに近付き頭を下げてくる。

私も慌てて、
「い、いえ…あの、私の方こそ何もお構い出来ず…申し訳ありませんでした。」
と、頭を下げる。

「聞けば香世様は近々、お父様の会社を継いで役員職に就かれるとお聞きしました。」

この人…何てお名前だったかしら?
と考えていると、突然そんな事を言われてびっくりする。

「え、えっと…父がお世話になった方に少しでも恩返しが出来ればと、会社のお手伝いをしに行く事にはなってますが…。」

何だか話が大きくなっている様な気がして
首を傾げる。

「正臣は、子供の頃から何を考えているのか分からない様な子だったが…
ここに来て、家督を継がず弟に譲ると言って来た。しかも軍も辞めて貴方の会社で働くと言う。正臣をたぶらかしてどう言うつもりだ?」
突然、正臣様のお父様から鬼の形相でそう言われ驚き固まる。

「えっ⁉︎たぶらかす…?」
訳が分からず口にする…