こんな風に生活は日常に戻り、ぎこちなかった2人の間も徐々に慣れ親しんで穏やかなものになって行く。

怪我から2か月ほど経ったある日、

香世は日課の掃除をタマキと一緒にこなすようになっていた。

3人いた女中も2人いつの間にか本宅へ移ったらしく、香世は簡単な料理もタマキに教えて貰いながら楽しく家事をこなしている。

どんなに失敗しても、正臣は食べてくれるし
それを楽しそうに喜んでくれる。

「何でもこなせる香世を知っているだけに、
今の初心の香世を見ていると得した気分になる。」
そう正臣が言うから、無くした3年間を悔やみ
もっと頑張って早く取り戻そうとしたくなる。

今朝も正臣の為、だし巻き卵を作ったのだが、火加減を誤り焼き過ぎて少し焦げて硬くなってしまった。

落ち込んでいると、正臣が台所までわざわざ来て、むしろそれが食べたいと失敗した卵焼きを指定してくる。

これはこれで美味しいと言って、パクパクと食べて心配する香世を尻目に、楽しそうに笑って仕事に行ってしまった。