それからまた、
正臣と香世の2人の生活が始まった。

正臣は前にも増して香世を大事にして、少しの荷物も持たせない程の徹底振りを見せた。

暇を持て余した香世が家事を手伝おうとすると、途端にどこからか駆けつけて来て、取り上げてしまう。

その代わり、次の日には本を沢山買って来たり、香世が暇にならないようにと、
生花用の花材や鉢、花瓶などを次々に買って来た。

香世は仕方無く日々、生花や書物を読んで過ごしたり、習字をしたりとまるで令嬢のような優雅な生活を過ごしていた。

次の日には心配した真子が、
学校帰りに龍一とお見舞いに来てくれて、賑やかな午後を過ごす。

真子の事は記憶から抜け落ちていたが、不思議と抵抗無く、初めからまるで妹のように思い、違和感無く接する事が出来た。

一番困ったのは、正臣に対しての恋心で…

少しでも触れ合う事があるならば、真っ赤になって俯いてしまう。

正臣もそんな初心な香世を怯えさせないよう
出来る限り己を制御し、必要以上に触れないように心がけた。

そんな我慢の1か月が過ぎ、
やっと香世も普通の生活に戻って行った。