楽しく3人で朝食を食べ終えた頃にやっと姉が起きてくる。

そこで正臣は改まって正座をして姉と向き合う。

「実は、姉上にお願いがありまして、
今後の香世殿の事なのですが、
香世殿さえ良ければこの家にもうしばらく居て頂きたいと思っています。
せめて、安静にすべき1か月程は我が家でのんびりと過ごして欲しいと思っております。」

姉は微笑み、香世は驚きの顔を見せる。

「私は元よりそう思っておりましたよ。
記憶が無いとは言え、香世ちゃんは二階堂様の婚約者ですし、実家に帰ってくる事は世間体にも悪いと思うわ。
香世ちゃん、そうして頂きなさいな。
龍一の事は私とマサに任せて。」

香世はそんな姉を信じられない物を見る顔をして、しばし固まる。

「香世、香世はどう思う?」
なかなか返事をくれない香世に、
痺れを切らして正臣はつい聞いてしまう。

「あの、私は…記憶が無い分…その、
二階堂様に申し訳ないと思うのですが…
こんな私で良ければ…しばらく置いて頂きたいと思います。」

香世は辿々しくも、正臣に向かい合い頭を下げる。

「良かった。
俺としては是が非でもここに居て欲しい。
昨日、今日だけでもハラハラする事が何度かあった。
香世に何かあったらと思うと心配でならない。俺の為と思って側にいて欲しい。」
正臣にそう言われると、昨日からの失態を思い出して香世は何も言えず…。

よろしくお願いしますと頭を下げるしかなかった。

「良かったね、二階堂様。
姉様、僕の事は心配しないでね。寂しくなったらまた、遊びに来るから。」

龍一はいつの間にか二階堂の味方のようで
心強い言葉をくれる。


こうして、龍一と姉はお昼前に帰って行った。